会陰ヘルニア
会陰部の筋肉が弱くなり裂けてしまうために腹腔内の臓器がはみ出してしまう病気で、去勢していない老齢のオスに多発します。
お尻の横が盛り上がって膨らんだ状態になります。押すと引っ込んだりしますが、しばらくするとまた出てきてしまいます。この状態を放置しておくと癒着を起こして、押しても引っ込まないようになります。ヘルニアを起こしている臓器は直腸・膀胱などなので、排尿や排便が困難になることがあります。
手術が確実です。老齢で手術が出来ない場合は対症療法を行うことになります。若いうちに去勢しておくとある程度予防することができます。
膝蓋骨脱臼
膝蓋骨(膝のお皿の骨)が外れてしまう病気です。事故・外傷で二次的に起こることもありますが、遺伝的要因が関与しているものが多いです。
無症状のものから軽度の跛行を示すもの、痛みを示すものなど程度によって様々です。関節炎や前十字靱帯の損傷を伴っている場合もあります。
手術が確実です。症状が軽い場合は痛みを和らげるために鎮痛剤を使用したり、体重制限などの保存療法をとる場合もあります。
股関節形成不全
大型犬に多く見られる病気です。遺伝的要素が大きく関わっています。股関節が先天的に不安定なために関節に無理な力が加わり、関節面が変形し、激しい痛みを生じて、跛行するようになります。
iUIの後の痛み
股関節の変形が進行するに従って痛みが出てきます。お尻を振りながら歩いたり、ウサギ跳びのように両後足を一緒に出して走ったりするようになります。座ったり、横になったりすると立ち上がるのが困難になることもあります。階段が上がれない・触ると痛がるなど、足を使わなくなるので筋肉も衰えてきます。
消炎剤・鎮痛剤などで痛みを抑えます。運動制限・体重制限により痛みの発生を防ぐことは可能です。また手術により痛みを抑える場合もありますが、変形した股関節を完全に元に戻すことはできません。
レッグ・ペルテス病
大たい骨の骨頭部分が虚血性に変性・壊死を起こすことによって、股関節の虚脱と関節炎を起こす病気です。小型犬・トイ犬種に多く見られ、遺伝的要素も示唆されています。1歳未満での発症が普通です。
跛行は体重が増えるに従って進行します。股関節付近を触ると痛がることがあります。痛い方の足は使わなくなるので、筋肉が衰えてきます。
手術により骨頭を切除するのが確実です。その後はリハビリを行います。
汎骨炎
大型犬で特に成長期の犬に発生する病気です。尺骨や脛骨のような長い骨に見られ、部分的な炎症を起こします。
痛みによる跛行が主な症状です。痛みが激しいと足を地面に着けなくなります。
運動制限・体重制限で痛みを抑えられますが、成長期の犬では必要以上に行うことは好ましくありません。鎮痛剤・消炎剤の投与を行う場合もあります。成長に伴って症状は改善されます。
関節炎・骨関節症
関節軟骨が変性することにより関節面が変形し、炎症を伴って痛みを生じた状態を言います。
コルチゾールの筋肉疲労
運動後や長時間寝ていた後に跛行が目立つことが多く、気温の低い日に跛行が見られることもあります。痛い方の足に体重をかけるのを嫌い、足を使わなくなります。
鎮痛剤・消炎剤を使用します。運動制限・体重制限も痛みを抑えるために必要です。手術が必要な場合もあります。また、股関節形成不全などの原因疾患がある場合は、その治療を行います。治療は痛みの軽減が目的で、変形した関節面を再生するものではありません。
椎間板ヘルニア
背骨の骨と骨の間には椎間板というクッションがあります。椎間板が変性を起こして硬くなり、ヘルニアを起こして脊髄を圧迫するようになった状態です。胴が長く足の短い犬種に多発します。
ごく軽度の麻痺を示すものから、足が動かなくなってしまうものまで、圧迫の程度・部位により様々です。
手術により圧迫を解除してやるのが確実です。程度が軽かったり発症してから数時間程度であれば、消炎剤による治療を行う場合もあります。発症後、数日〜数週間経過してしまったものでは治療しても、麻痺が戻らない場合もあり、車椅子を利用することもあります。排便・排尿困難の場合は腹部を圧迫して排便・排尿させてやる必要があります。
水頭症
トイ犬種や短頭種の小型犬に多発します。膿脊髄液が過剰にたまり、大脳が圧迫されて、様々な症状を起こします。
トイ犬種では特に症状を起こさないこともよくありますが、頭を触ると頭蓋骨に穴が開いているのが分かることがあります。刺激に対する反応が鈍い・歩き方や行動がなんとなくおかしい・目が見えないなどの症状が見られます。痙攣や発作を起こすものもありますが、大抵は問題なく飼うことができる場合がほとんどです。
足のトウモロコシの痛み
膿脊髄液の量を減らして脳圧を下げるために、ステロイドやグリセリンを投与します。利尿剤を使用する場合もあります。外科的方法もありますが難しいため獣医師に相談した方がよいでしょう。
てんかん
脳内に異常な神経衝撃が発生することにより発作を起こす病気です。脳に腫瘍や変性が見られない突発性てんかんは5歳以下の若い犬に発生し、遺伝などが関わっていると考えられています。腫瘍・変性や細菌感染などが原因となる症候性てんかんはどの年齢でも起こる可能性があります。その他、肝不全、尿毒症、中毒、アレルギーなどが原因で起こる場合もあります。
神経衝撃の起こる場所により症状は異なります。意識の消失、全身性の痙攣・発作を起こす全般発作や手足や顔面などの体の一部に痙攣などが見られる部分発作があり、毎回同じパターンをとるのが普通です。発作は数分間続き、発作前にそわそわするなども兆候を示す場合もあります。発作による呼吸困難や外傷など二次的な事故に注意が必要です。連続して発作を起こすと窒息や筋肉組織の破壊など致死的な状況に陥ることがあります。
抗てんかん薬による治療が必要です。治療は長期間に渡り、薬の量のコントロールなどを行いますが、勝手に薬を減らしたりすると重積発作(連続発作)が起きる場合があるので、獣医師の指導を良く守り投薬する必要があります。
前庭症候群
前庭神経と言う脳神経の障害により起こる疾患です。内耳炎による炎症で前庭神経が圧迫されることで発症します。
平衡感覚が麻痺し、障害の起きている側に頭が傾いたり、目が左右に揺れたり、同じ側にぐるぐる回ってうまく歩くことが出来なくなります。また、内耳の側を通る神経の障害により顔面麻痺などが起こります。
内耳炎の治療により改善します。治療には時間がかかる場合もあるため、顔面麻痺が起こっている場合は、顔面の筋肉の萎縮を防ぐため、顔のマッサージをしてあげます。
多発性筋炎
免疫介在性、原虫や細菌感染、好酸球性筋炎などの原因により全身の骨格筋に炎症が起きた状態です。
全身の筋肉の痛みとそれによる跛行、筋肉の脆弱化・萎縮が見られ、体を触ると痛がるようになります。犬では食道の筋肉も骨格筋であるため、ものをうまく飲み込めなかったり、食べたものを吐き出したりします。
感染が原因の場合は、その治療を行います。免疫介在性・好酸球性筋炎では免疫抑制剤や消炎剤を使用します。
重症筋無力症
筋肉を動かす神経伝達物質アセチルコリンの伝達がうまく行かなくなることで筋肉の収縮力が低下する病気です。多くは後天的に発生し、主に免疫介在性であると言われています。また、胸腺に腫瘍が見つかる場合もあります。
軽症であれば、運動後に疲れやすい・歩き方に力強さがないなどですが、重症になるに従って、虚脱状態を起こしたり、立ち上がれなくなったりします。食道が侵されると食道拡張を起こしてうまく食べられなくなったり、吐いたりします。食べ物が気管に入って、誤嚥性肺炎を起こす場合もあります。
コリンエステラーゼ阻害薬や免疫抑制剤を使用します。胸腺に腫瘍がある場合は手術により切除する場合もあります。食事の際に誤嚥を防ぐため、後足で立たせて食事させるなど注意が必要です。
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